学会概要
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- 「日本山岳修験学会」は日本人の信仰の原点である山岳信仰ならびに修験道を多方面から調査・研究し、その学術的発展を図ると共に社会に資することを目的とした学会である。
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- 修験道とは山岳での修行と、それによって得られるという験力への信仰を中核とした宗教活動で、平安時代中期に成立し、担い手は山伏・修験者と呼ばれ、現在に至るまで、日本の祭り・儀礼・芸能・文学・美術・建築・口頭伝承などに大きな影響を与えてきた。その根源には日本人の持つ自然観や宇宙観がある。修験道は、仏教・神道・陰陽道・道教などが習合した宗教形態で、明治の神仏分離政策によって大きな変化をこうむったが、現在も根強く継続している。2004年には、熊野三山、高野山、吉野・大峯の三つの霊場とそこに至る参詣道(熊野古道・高野山町石道・大峯奥駈道など)や、それを取り巻く文化的景観が、ユネスコの世界遺産に「紀伊山地の霊場と参詣道」として登録され、世界的にも文化的価値が高く評価されて、地域起こしにも結びつくなど新たな展開がある。
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- 本会は1980年に田村圓澄(九州大学名誉教授)を会長として、重松敏美(元求菩提資料館館長)、長野覺(元駒澤大学教授)らを中心に、山岳信仰や修験道の研究者が設立した西日本山岳修験学会に淵源を持っている。1984年には比叡山で学術大会を開き、全国規模の山岳修験学会へと展開し、1994年に現在の学会名となって今日に至っている。会員数は約500名を擁し、日本学術会議登録の学会として内外に知られ、外国人会員も少なくない。
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- 会員は全国各地の大学、研究機関、教育委員会、博物館、美術館、関係社寺、一般市民など多様で、研究分野も歴史、地理、民俗、宗教、文学、美術、芸能、考古など多岐にわたる。日本民俗学会、人文地理学会、日本宗教学会、日本文化人類学会、民俗芸能学会、地方史協議会、日本印度学仏教学会など関連学会の役員も少なくない。また会員の中には、日本学術振興会の秩父宮記念学術賞、同会の日本学術学会賞を受けた研究者も数人いる。国際的な活動としては、2005年に日本で開催された第19回国際宗教学宗教史会議世界大会(IAHR)でパネル発表「日本における山岳信仰と修験道」「オカルト・ジャパン−木曽御嶽信仰の現在」を行い、2008年にはコロンビア大学で開催された日本宗教研究の国際会議「Shugendo : the History and Culture of a Japanese Religion」に当学会員6名が発表者として招かれた。会員には国際会議での発表者も多く、研究活動は内外で注目されている。
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- 当学会の主要な活動は、毎年霊山の社寺等で開催する学術大会(現在第33回)と機関誌『山岳修験』(年2回、現在第50号)の発刊、山岳修験に関する優れた研究者の業績に対する日本山岳修験学会賞の授与、機関誌に掲載された若手研究者による優れた論文に対する奨励賞の授与などである。特に、学術大会は開催地の霊山、霊場、遺跡に関する講演・シンポジウム・会員の研究発表、社寺や霊山の巡見、芸能や史料の見学などから成り、その成果は機関誌の特集号にまとめられている。なお、この学術大会の開催は霊山の社寺や行政、博物館などの支援を得て行っている。特に、日光、熊野、高野山、吉野などでは世界遺産の登録に協賛する形で実施した。このように当学会は会員の相互の研鑽のみでなく、山岳修験の調査研究を通して、社会教育、地域振興に寄与することを目指している。
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学術大会シンポジウム
(第30回高野山大会) |
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巡見
(関山神社・第29回妙高大会) |
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